夏祭りや地域のイベントとして親しまれている盆踊り。見よう見まねで楽しく踊っているものの、「そもそも何のために踊るの?」「仏教とどんな関係があるの?」と疑問に思ったことはありませんか?
実は、盆踊りは単なる夏の娯楽ではなく、ご先祖様の霊を慰め、供養するための大切な仏教行事としての意味を持っています。
この記事では、盆踊りの意外なルーツや仏教との深い関係、そして踊り一つひとつに込められた願いについて、重要な3つのポイントに絞って解説します。本来の意味を知ることで、今年の盆踊りはより味わい深いものになるはずです。
盆踊りとは?意外と知らない仏教との関係【ポイント1:起源】
日本の夏を彩る盆踊りですが、その起源を探ると仏教と深く結びついた歴史が見えてきます。ここでは、盆踊りがどのように生まれ、現在のような形になったのか、そのルーツについて解説します。
盆踊りのルーツは平安時代の「念仏踊り」
盆踊りの源流は、平安時代に空也上人によって始められたとされる「念仏踊り」にあると言われています。空也上人は、念仏を唱えることを民衆に広めるため、鉦(かね)や太鼓を叩きながらリズミカルに踊るという方法を取り入れました。この独自のスタイルが、当時の人々に受け入れられ、仏教の教えと共に広まっていったのです。これが、現在の盆踊りの最も古い形と考えられています。
一遍上人が広めた「踊り念仏」と盂蘭盆会の融合
鎌倉時代に入ると、一遍上人が全国を遊行しながら「踊り念仏」を広めました。念仏を唱えながら踊ることで陶酔状態に入り、宗教的な恍惚感を得るこの行事は、多くの民衆を惹きつけました。この踊り念仏が、先祖の霊を祀るお盆の行事である「盂蘭盆会(うらぼんえ)」と結びつくことで、現在の盆踊りの原型が形成されていきました。信仰心と民俗行事が融合し、地域社会に定着していったのです。
「お盆」という仏教行事における位置づけ
仏教における「お盆」は、正式には盂蘭盆会と呼ばれ、ご先祖様の霊がこの世に帰ってくる期間とされています。この期間に行われる盆踊りは、単なる娯楽ではなく、帰ってきた霊をもてなし、供養するための重要な儀式としての位置づけを持っています。つまり、盆踊りはお盆という仏教行事の中で、死者と生者が交流する神聖な時間としての役割を果たしてきたのです。
盆踊りの目的は「供養」と「歓喜」【ポイント2:目的】
盆踊りには大きく分けて二つの目的があると考えられています。一つは亡くなった方への「供養」、もう一つは救われたことへの「歓喜」です。それぞれの意味について詳しく見ていきましょう。
ご先祖様の霊を慰め、送り出すための儀式
お盆の時期、家に戻ってきたご先祖様の霊を慰めるために踊るのが盆踊りの基本的な目的の一つです。賑やかに踊ることで霊を喜ばせ、お盆の終わりの時期には、その霊をあの世へと送り出すという意味も込められています。地域によっては、初盆を迎える故人のための供養として、念仏を唱えながら踊る風習が今も色濃く残っています。
地獄の苦しみから救われた喜びを表す
もう一つの重要な意味は「歓喜」です。これはお盆の由来となった「目連尊者」の説話に関係しています。目連尊者が、餓鬼道に落ちて苦しんでいる亡き母を、お釈迦様の教えに従って供養し、救い出したという物語です。母が苦しみから解放され、天界へ昇ったことを知った目連尊者が、喜びのあまり踊り出したことが盆踊りの始まりだとも伝えられています。つまり、供養が届いたことへの喜びを体現しているのが盆踊りなのです。
実は「死者と一緒に踊る」という意味も?
盆踊りには、お盆で帰ってきた精霊たちが、踊りの輪の中に加わっているという考え方もあります。顔を覆うような笠や手ぬぐいで顔を隠す衣装が見られるのは、生者と死者の区別をつけないようにするため、あるいは亡くなった人が輪に入りやすくするためだと言われています。生きている人間だけでなく、亡き人々と共に踊り、一時的な再会を楽しむ場でもあるのです。
櫓(やぐら)や輪の形に隠された仏教的意味【ポイント3:形式】
盆踊りの会場で見られる櫓や、参加者が作る輪の形にも、実は仏教的な意味が隠されています。何気ない形式の中にも、深い祈りや信仰心が反映されています。
なぜ時計回りに回る?輪になって踊る理由
多くの盆踊りでは、参加者が輪になり、時計回り(右回り)に進んでいきます。これは、仏教における「右繞(うにょう)」という礼法に基づいているという説が有力です。右繞とは、仏像や塔の周りを右回りに回って敬意を表す作法のことです。また、輪になって踊る円形は「円満」を意味し、集団の和や平等を象徴しているとも考えられています。
櫓(やぐら)は「高座」であり、神仏が降りる場所
広場の中央に組まれる櫓は、単に音頭取りや演奏者が乗るためのステージではありません。櫓は神様や仏様が降りてくる依り代としての役割や、高い位置から説法を行う「高座」としての意味合いを持っています。盆踊りの中心に高くそびえる櫓は、あの世とこの世をつなぐ柱のような存在であり、そこから発せられる音頭に合わせて踊ることは、神仏や精霊と交信することに通じると考えられてきました。
手の動きや足運びに込められた祈り
盆踊りの振り付けは、農作業の動作を模したものが多いですが、中には仏教的な意味を持つ所作も含まれています。例えば、手を合わせるような動きは合掌を表し、天に向かって手を伸ばす動作は救いを求める姿や供養の祈りを表現していることがあります。また、足で地面を強く踏み鳴らす動作には、大地の精霊を鎮めたり、悪霊を封じ込めたりする意味があるとされています。
日本三大盆踊りに見る仏教の影響と特徴
日本各地には多様な盆踊りが存在しますが、中でも「日本三大盆踊り」と呼ばれるものは、それぞれ独特な歴史と仏教的な背景を持っています。ここではその特徴を紹介します。
阿波踊り(徳島県):念仏踊りの熱狂を受け継ぐ
徳島県の阿波踊りは、そのエネルギッシュな踊りで知られていますが、もともとは精霊踊りや念仏踊りが起源の一つとされています。「踊る阿呆に見る阿呆」というフレーズで有名ですが、かつては組を作って練り歩く風流踊りの要素も強くありました。熱狂的な乱舞は、一遍上人の踊り念仏に見られるような、忘我の境地や宗教的な高揚感を現代に伝えているとも言えます。
西馬音内の盆踊り(秋田県):亡者踊りとしての色彩
秋田県の西馬音内(にしもない)の盆踊りは、優雅で幻想的な雰囲気が特徴です。特に、目だけを出した「彦三頭巾(ひこさずきん)」という黒い覆面をして踊る姿は「亡者踊り」とも呼ばれています。これは、死者が生者に混じって踊っている様子を表しているとされ、盆踊りが持つ死者供養の側面を色濃く残している貴重な例です。
郡上おどり(岐阜県):お盆の期間中踊り続ける徹夜踊り
岐阜県の郡上おどりは、お盆の期間を含む長期間にわたって開催され、特にお盆の4日間は朝まで踊り続ける「徹夜踊り」が行われます。この期間は、先祖の供養のために一心不乱に踊り明かします。江戸時代、身分の隔てなく無礼講で踊ることが許されたことから、地域の一体感を高めるとともに、仏教行事としての熱気が最高潮に達する場となっています。
意味を知ればもっと深い!現代の盆踊りの楽しみ方
盆踊りの歴史や仏教的な背景を知ることで、現代の私たちにとっても盆踊りはより意義深いものになります。最後に、現代における盆踊りの楽しみ方について触れます。
伝統を守りつつ地域交流を深める
現代の盆踊りは、宗教的な意味合いだけでなく、地域コミュニティの結びつきを強める場としても機能しています。地元の伝統的な踊りを継承することは、地域のアイデンティティを守ることにつながります。世代を超えて同じ輪の中で踊ることで、普段は接点のない人々とも交流を深めることができるでしょう。
心を込めて踊ることで得られる一体感
上手く踊ることよりも、心を込めて踊ることが大切です。ご先祖様への感謝や、周囲の人々との調和を意識しながら踊ることで、不思議な一体感や清々しさを感じることができます。太鼓の音や音頭のリズムに身を任せ、無心になって体を動かす時間は、日常のストレスを忘れさせ、心の洗濯をする良い機会にもなります。
参加する際のマナーと服装のポイント
盆踊りに参加する際は、主催者や地域のルールを守ることが大前提です。服装は浴衣が一般的ですが、動きやすい服装であれば問題ない場合も多いです。ただし、仏教行事としての側面も忘れないよう、過度に露出の多い服装は避けたほうが無難です。また、踊りの輪に入るときは、流れを乱さないようにタイミングを見て入り、前の人に続いて踊るように心がけましょう。敬意を持って参加することで、誰もが気持ちよく盆踊りを楽しむことができます。
案内人より一言

このような歴史を知ると、全国の盆踊りを見に行きたくなりますね。





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